「フリーランスエンジニアはやめとけ」——独立を決めた時、職場の先輩や上長から何度もこの言葉を聞きました。言われるたびに不安になりながらも、結局独立して3年が経ちました。あの言葉は正しかったのか、それとも的外れだったのか。今回は「やめとけ」と言われる理由を一つひとつ取り上げて、3年間の実体験をもとに正直に検証します。
SEねぐです。SE歴8年(会社員5年・個人事業主3年)のフリーランスエンジニアです。独立前に言われた言葉だけでなく、フリーランス全般に言われがちな不安についても、自分の経験を交えながらきれいごとなしで答えていきます。

- 「やめとけ」と言われる9つの理由と3年後の正直な判定
- フリーランス特有の孤独の実態
- 収入の不安定さ・税金負担の現実
- インボイス制度が手取りに与えた影響
- 年齢・スキル陳腐化リスクとの向き合い方
- 「やめとけ」と言いたくなる人が本当に存在する理由
「やめとけ」と言われる9つの理由
独立を検討していると耳にする「やめとけ」の声。私が独立前に先輩・上長から言われたものに加え、フリーランスエンジニア全般に対してよく言われる理由をまとめると、大きく9つに整理できます。
「独立して仕事がなくなったら大変だぞ」「インボイスが始まるタイミングでフリーランスは大幅に減るぞ」「ローン審査が通りづらくなる」「買いたたかれたり、使いつぶしにされることもある」「続けるのは難しく、数年で会社員に戻る人も多い」「独立するのは簡単だが、続けるのはシビアな世界だ」——ここまでが私が直接言われた言葉です。これに加え、フリーランスエンジニア全体に対してよく指摘される「収入が不安定で生活が安定しない」「経費・社会保険料・税金の自己負担が重い」「年齢を重ねると案件が取りにくくなる」という3つの懸念もあります。
では、これらは実際にどこまで正しいのか。3年間の経験をもとに一つひとつ検証していきます。
9つの「やめとけ」理由を3年後に検証した結果
結論を先に言うと、9つのうち「完全に本当だった」と言えるものは1つもありませんでした。ただし「半分は本当だった」と感じるものが複数あります。
| 「やめとけ」の理由 | 3年後の判定 |
|---|---|
| 仕事がなくなったら大変 | 的外れ。エージェント活用で案件は途切れていない |
| インボイスでフリーランスが大幅に減る | 半分的外れ。激減はしなかったが手取りへの影響はあった |
| ローン審査が通りづらい | 的外れ。独立前に準備済み。知人は独立後もローン通過 |
| 買いたたかれ・使いつぶしにされる | 的外れ。法整備が進み、大手現場では安心して働けている |
| 続けるのは難しく会社員に戻る人も多い | 半分本当。実力ではなく「孤独」が原因だと実感 |
| シビアな世界で独立を続けるのは難しい | 的外れ。準備と熱量があれば継続できる |
| 収入が不安定で生活が安定しない | 半分本当。案件の切れ目に収入が読めない時期はある |
| 経費・社会保険料・税金の自己負担が重い | 本当。会社員時代より手取りの管理が複雑になる |
| 年齢を重ねると案件が取りにくくなる | 未経験だが、リスクとして意識して対策を取り続けている |
以降では、特に読者の不安が大きい「孤独」「収入・税金」「年齢リスク」の3つを中心に詳しく掘り下げます。
「本当だった」と感じたこと——フリーランスは孤独との闘いだった
「続けるのは難しく、数年で会社員に戻る人も多い」という言葉。当時は「実力が足りなければ戻ることになる」という意味に受け取っていました。しかし3年間やってみて、この言葉の本当の意味は別のところにあると感じています。
フリーランスとして常駐している現場では、チームで仕事をします。ただし、立場上は全員が「他社の人間」です。自分が参加しない会議が設定されていても不思議ではなく、共有されない情報もあります。会社員時代は別案件の同僚でも気軽に相談できる仲間でしたが、今は同じ現場にいても「どこまで頼っていいのか」という境界線が常に曖昧です。
フリーランスは、一人で抱え込む場面が思った以上に多い。問題が起きた時に「誰かに相談する」という行動のハードルが、会社員時代と比べて確実に上がっています。3年間続けてきた今、「孤独に負けて会社員に戻る人がいる」という話は、実力の問題ではなくこの精神的な消耗が原因なのだと理解できます。
常駐案件でチームにいても、立場は常に「外部の人間」。自分抜きの意思決定・共有されない情報・相談相手の少なさが積み重なり、精神的な消耗につながる。実力ではなく孤独が、フリーランスを辞める最大の理由になっていることが多い。
フリーランスの孤独とどう向き合うかは、3年間で自分なりの答えを出しました。具体的な乗り越え方は別記事で詳しくまとめています。
収入の不安定さと税金負担——正直に数字で向き合った話
「収入が不安定」「税金・社会保険料の負担が重い」という指摘は、フリーランスに対してよく言われる代表的な不安です。この2点については、的外れとは言えません。
収入の安定性について言うと、私の場合は同じ現場で継続契約を更新し続けているため、月単位での収入の波は少ない方です。ただし案件が切り替わる時期——たとえば現場を移る検討をしていた時期は、次の案件が確定するまで収入の見通しが立たない状態になりました。会社員のように「今月末に必ず給与が振り込まれる」という安心感は、フリーランスにはありません。これは事実として受け入れておく必要があります。
税金・社会保険料の負担については、会社員時代より複雑になったのは確かです。健康保険料と年金はすべて自己負担になり、住民税も一括または年4回の納付が必要です。加えてインボイス登録後は消費税の納税も加わりました。私は毎月の収入から消費税分を別口座に積み立てることで対処していますが、この管理を怠ると確定申告の時期に大きな出費が一気に来ることになります。
収入が増えても手元に残る割合は会社員時代の感覚とは異なります。「額面の収入が上がったから豊かになった」ではなく、税金・経費・保険料を引いた後の実質的な手取りを常に意識して管理することが求められます。これは独立前に知っておくべき最重要事項の一つです。
確定申告まわりの準備については、独立1年目に失敗した経験をもとに別記事で詳しく解説しています。税金管理に不安がある方は先に読んでおくことをおすすめします。
「的外れだった」と感じたこと——買いたたかれる心配は不要だった
「買いたたかれたり、使いつぶしにされる」という言葉は、3年間で一度も現実になっていません。その理由は2つあります。
1つ目は、法整備が進んでいること。2024年11月に施行された「フリーランス・事業者間取引適正化等法」により、発注者側がフリーランスに対して不当な扱いをすることへの規制が強化されました。大手企業の現場であれば、コンプライアンス対応に慎重な担当者が多く、無茶な要求をされた経験は一度もありません。
2つ目は、成果を出すことで関係性が変わること。現場で信頼を積み上げると「長くいてもらうために丁寧に扱いたい」という雰囲気が自然と生まれます。タスクについて密に相談してもらえるようになり、「買いたたかれる」どころか単価交渉でも好条件を引き出せるようになりました。
参画する現場の規模によって差はあると思いますが、大手企業の常駐案件であれば、買いたたきや使いつぶしの心配はほぼ不要です。この点については、独立前に言われた言葉の中で最も的外れだったと感じています。
年齢を重ねると案件が取りにくくなる——3年目が正直に向き合っていること
「年齢を重ねると案件が取りにくくなる」という懸念については、私はまだ30代前半であり、直接経験したわけではありません。ただ、これは的外れとも言い切れない、正直に向き合っておくべきリスクだと考えています。
フリーランスエンジニアへの発注は、プレーヤーとして手を動かす役割が中心です。50代以上になると発注者より年齢が上になるケースが増え、発注側が依頼しにくくなるという構造的な問題が指摘されています。マネジメント人材として発注されるケースはフリーランスには少なく、プレーヤーとして現役でいられる期間をどう延ばすかが長期的な課題です。
私自身がこのリスクに対して取っている対策は、技術の幅を継続的に広げることです。半年に1度の資格取得・AIツールの業務活用・副業でのホームページ制作——特定の技術やポジションに依存せず、常に「今の現場で価値を出せる人間」であり続けることを意識しています。
年齢リスクは今すぐ深刻になる問題ではありませんが、「40代・50代になっても選ばれるエンジニア」であるために、20代・30代のうちに技術と信頼を積み上げておくことが唯一の対策です。この点については、やめとけと言う人たちの懸念を正面から受け取っています。
それでも「やめとけ」と言いたくなる人は存在する——向いていない人の特徴
「やめとけ」という言葉を全否定するつもりはありません。3年間やってきた立場から正直に言うと、フリーランスに向いていない人は確かに存在します。
まず、自分でタスクを作れない人は厳しいと感じます。現場に参画すると技術力を見て契約が結ばれますが、顧客からすべての指示が出るわけではありません。案件の全体像を把握した上で「今の自分に何ができるか」「いつまでにどんな資料を作るべきか」を自分で判断してタスク化していく主体性が求められます。指示待ちのまま動けない状態が続くと、契約更新が難しくなります。
次に、会議で発言しない人も向いていないと感じます。「○○の点が理解できなかったのですが、確認してもいいですか」「○○のケースではどう対応しますか」——こうした自分の頭で考えた発言が、現場での存在感と信頼につながります。特別な技術力がなくても積極性で補えますが、積極性のない技術力は補いにくいのが現場の現実です。
逆に言えば、フリーランスで必要な技術力は思っているより高くないケースが多い。技術より主体性とコミュニケーションが、継続できるかどうかを決める要素として大きく影響します。
- 指示がなければ動けない・自分でタスクを作れない
- 会議で発言しない・自分の意見を持たない
- 孤独な環境に長期間耐えられない
- 税金・収入管理を人任せにしたい
- 技術力は高いが、コミュニケーションを避けがち
「やめとけ」を乗り越えてフリーランスで成功するための条件
9つの「やめとけ」理由を検証してきましたが、準備と心構えがあれば乗り越えられるものがほとんどです。3年間で自分が意識してきたことを整理すると、成功するための条件は3つに集約されます。
1つ目は、会社員時代と同じ熱量で仕事に向き合い続けること。フリーランスになると自由が増える分、仕事への姿勢が緩みがちになります。「お客さんが求めていることを言語化して確認する」という基本的な姿勢を崩さないことが、現場での信頼と継続契約につながります。
2つ目は、収入・税金の管理を仕組み化すること。消費税・住民税・社会保険料を毎月の収入から自動的に積み立てる仕組みを作れば、確定申告の時期に慌てることはありません。収入が不安定でも、支出の見通しが立っていれば生活は安定します。
3つ目は、技術と信頼を継続的に積み上げること。特定のスキルや現場に依存しない幅広い技術と、どの現場でも信頼される人間力を両輪で磨き続けることが、年齢リスクへの最大の対策になります。
- 「やめとけ」と言われる9つの理由のうち、完全に本当だったものは1つもなかった
- 孤独・収入の不安定さ・税金負担は正直に向き合うべきリスクとして存在する
- 買いたたき・使いつぶしの心配は、法整備と成果の積み上げで解消できる
- 年齢リスクは今すぐ深刻ではないが、技術と信頼の継続的な積み上げが唯一の対策
- 向いていないのは技術力がない人ではなく、主体性とコミュニケーションが苦手な人
- 準備と心構えがあれば、「やめとけ」の不安のほとんどは乗り越えられる
「やめとけ」という言葉をそのまま信じて独立を諦める必要はありません。ただし孤独・税金・年齢リスクについては、事前に正しく理解した上で準備を進めることが重要です。独立前にやっておくべき具体的な準備は、こちらの記事でまとめています。
※本記事は個人の体験談をもとにしています。フリーランスとしての収入・案件・環境は個人のスキルや現場によって異なります。独立の判断はご自身の状況を十分に確認した上でご検討ください。


