フリーランスになって自由な働き方を手に入れた一方で、「もし病気や怪我で働けなくなったらどうしよう」という不安を感じたことがある方は多いと思います。会社員のような有給休暇や傷病手当金がない中で、実際に何を備えておけばいいのか。今回はその実態と、私自身が実際にやっている備えを正直にお伝えします。
SEねぐです。フリーランスSE3年目。結論から言うと、私は民間の保険には加入せず、貯金とNISAでカバーする方針を取っています。これは「保険が不要」という主張ではなく、あくまで自分の年齢・状況を踏まえた上での一つの判断です。この記事では、その判断の根拠と、今の備えで正直に足りていない部分も含めてお話しします。

- フリーランスには「傷病手当金」がないという制度上の現実
- フリーランスが検討できる備えの選択肢(保険・貯金)
- 実際にどんな備えをしているか、その判断理由
- 家族がいる中でどう考えているか
- 今の備えでまだ足りていないと感じている部分
フリーランスには「傷病手当金」がないという現実
会社員の方であれば、病気や怪我で働けなくなった場合、加入している健康保険から傷病手当金が支給されます。仕事を4日以上連続して休んだ場合に、おおよその給与の3分の2程度が、最長1年6ヶ月にわたって支給される制度です。
一方、フリーランス・個人事業主が加入する国民健康保険には、この傷病手当金の制度がありません。国民健康保険はあくまで医療費の負担を軽減するための制度であり、収入そのものを補償する機能は持っていないためです。つまり、フリーランスが病気や怪我で働けなくなった場合、収入の減少を補ってくれる公的な仕組みは基本的に存在しないということになります。会社員時代には意識したことがなかったこの違いは、独立して初めて実感する現実の一つです。
さらに、会社員であれば有給休暇を使うことで、休んでいる間も給与が支払われますが、フリーランスにはそもそも有給休暇という概念自体がありません。1日でも稼働を止めれば、その日の収入はゼロになるのが基本です。傷病手当金がないことに加えて有給休暇もないという二重の違いが、フリーランスの働けなくなった時のリスクを会社員よりも大きくしている構造だと言えます。
健康保険料そのものの負担についても、独立後に驚いた経験があります。詳しくはこちらの記事で公開しています。
フリーランスが検討できる備えの選択肢
傷病手当金がない代わりに、フリーランスが備えとして検討できる選択肢はいくつかあります。
- 就業不能保険・所得補償保険:働けない期間の収入を一定額補償する民間保険
- 生活防衛費(貯金):数ヶ月〜1年程度の生活費相当を現金で確保しておく
- 高額療養費制度:医療費そのものの自己負担を一定額に抑える公的制度(収入補償ではない)
- 障害年金:一定の障害状態になった場合に受給できる公的制度
就業不能保険は、あらかじめ設定した保険料を毎月支払うことで、働けなくなった際に月々一定額の給付を受け取れる仕組みです。保障が手厚い分、当然ながら保険料の負担が発生します。一方、貯金で備える場合は保険料という固定費は発生しませんが、その分すべて自己責任でまかなうことになります。どちらを選ぶかは、保険料と保障のバランスをどう考えるか、そして自分の資産状況や年齢によって変わってくる部分です。
なお、高額療養費制度は医療費の自己負担額を一定の上限に抑える制度であり、収入の減少そのものを補償するものではありません。例えば69歳以下で年収約370万〜770万円程度の区分であれば、1ヶ月の医療費が100万円かかった場合でも、自己負担の上限はおおよそ8万円台に収まる計算になります。「大きな病気になったら医療費だけで何百万円もかかるのでは」という不安に対しては、この制度が一定の歯止めになってくれます。
※高額療養費制度の自己負担限度額は年齢・所得区分によって異なります。また収入の減少分は別途自己負担でカバーする必要があります。
実際にどんな備えをしているか
ここからは私自身の実際の備えについて、正直にお話しします。結論として、私は民間の就業不能保険・所得補償保険には加入していません。備えは貯金とNISAで対応する方針を取っています。
考え方としては、大きな病気で高額な医療費がかかる場合は高額療養費制度でカバーし、数ヶ月程度働けない期間が生じた場合は貯金とNISAの取り崩しでやりくりできると考えています。数年単位で長期にわたって働けなくなるケースについては、正直なところ「そうなったらフリーランスに限らず会社員であっても厳しい」と割り切っています。あらゆるケースを保険でカバーしようとすると保険料の負担が際限なく増えてしまうため、どこかで線引きをする必要があると考えました。
この判断をした理由は主に2つあります。1つは、今まで大きな病気や怪我で数ヶ月単位の休業を経験したことがなく、年齢的にも大きな病気のリスクがまだ低いと考えていることです。一般的にも、就業不能状態に陥る割合は年齢が上がるほど高くなる傾向があるとされており、20代後半〜30代のうちは相対的にリスクが低い期間だと言われています。もちろんこれは統計的な傾向であり、若いうちに大きな病気や怪我が起きないことを保証するものではありませんが、判断材料の一つにはなると考えています。もう1つは、保険料として毎月支払う金額を、将来を見据えてNISAに回した方が、複利の効果でお金が増える可能性の方が高いと判断したことです。保険料は「捨てるお金」になりやすい一方、投資に回したお金は将来の資産として育っていく可能性があります。もちろんこれは絶対の正解ではなく、リスクを取った上での選択です。
※投資には元本割れのリスクがあります。保険と投資はそれぞれ役割が異なるため、どちらか一方が絶対的に正しいというものではありません。
正直なところ、この備えを始めたきっかけは、特定の大きな出来事があったわけではありません。自分自身が体調を崩した経験も、周囲のフリーランスが働けなくなったという話を聞いた経験も今のところありません。あくまで「案件が途切れるリスク」に備えて生活費分の貯蓄を確保しておく、という一般的な生活防衛費の延長として考えている程度です。生活防衛費についての基本的な考え方は、こちらの記事で詳しく解説しています。
家族がいる中でどう考えているか
子どもがいる立場として、働けなくなるリスクはもちろん怖いと感じています。ただ、そのリスクに対して行き過ぎた準備をすることも、かえって今の生活を圧迫してしまうため不要だと考えています。
私が責任として一番大事にしているのは、「働けなくなる状況をそもそも作り出さないこと」です。仕事で結果を出し、契約を継続してもらうことはもちろんですが、それ以上に健康面での努力を怠らないようにしています。具体的には、野菜を意識して摂る、運動を習慣にする、健康診断を毎年欠かさず受診するといったことです。特別なことをしているわけではなく、どれも当たり前の内容ですが、フリーランスになって時間の融通が利くようになったからこそ、こうした地道な習慣を継続しやすくなったという実感があります。会社員時代は帰宅が遅くなりがちで運動の時間を確保しづらかった面もあり、独立後の方がむしろ健康管理に時間を割けるようになった部分もあります。フリーランスに限らず、会社員であっても働けなくなれば家族を支えることは難しくなります。立場に関わらず、まず働き続けられる体を維持することが最初の備えだと考えています。
将来的な考え方としては、万が一病気になった場合でも、NISA(インデックス投資)を少しずつ取り崩すことでお金の面での苦労を最小限にできればと考えています。だからこそ、今の段階ではNISAへの積立を最優先にして、複利の効果を最大限に活かそうとしています。保険料として今のお金を手放すのではなく、将来の自分自身への備えとして資産を育てておく、という考え方です。
今の備えで足りていないと感じている部分
ここまで前向きな考え方を書いてきましたが、正直に言うと、今の備えはまだ十分ではないと感じています。
貯金でカバーする方針だとお伝えしましたが、税金の支払いで毎年まとまった金額が出ていくため、思うように貯金が積み上がっていかないのが実情です。目標としては、生活費を月30万円と想定し、その24ヶ月分(2年分)にあたる720万円程度を現金で確保しておきたいと考えています。しかし、現時点ではこの金額にはまだ全く届いておらず、正直なところ心もとなさを感じています。
備えというのは一度決めたら終わりではなく、資産状況や家族構成の変化に応じて継続的に見直していくものだと感じています。現時点で保険に入らないという判断をしていますが、将来的に資産が目標額に届かない状況が続くようであれば、就業不能保険への加入もあらためて検討する余地はあると考えています。
フリーランスには傷病手当金がなく、働けなくなった時の収入補償は自分自身で用意する必要があります。備え方には保険と貯金という選択肢があり、私は現状、保険料をNISAに回して資産を育てる方針を取っていますが、これは万能な正解ではありません。何より大切にしているのは、そもそも働けなくなる状況を作らないための健康管理です。備えは一度決めたら終わりではなく、自分の年齢や資産状況に合わせて継続的に見直していくものだと考えています。
※本記事は個人の体験談・一般的な制度情報をもとに構成しています。保険・保障制度の詳細は保険会社・関係機関にご確認ください。医療・保険に関する判断は必ずご自身の状況に応じて行ってください。

