「SIerってきついって聞くけど実際どうなの?」——就職活動中にこの疑問を持ったことがある方は多いはずです。
SEねぐです。新卒でSIerに入社し、プログラマー・SE・テスター・PL・メンバー管理まで5年間様々なポジションを経験した後、フリーランスとして独立して現在3年目です。SIerは確かにきつい面があります。ただ、「きついからやめとけ」と一言で片付けてしまうにはもったいない側面も多い。5年間の体験をもとに、良かったことも悪かったことも正直にお伝えします。

- SIerの仕事内容の実態——プログラミングより「資料作成・コミュニケーション」が多い理由
- 5年間で「きつかった」こと3つ(具体的なエピソードあり)
- SIerに入って「良かった」こと——フリーランス3年目の今も活きていること
- 文系でもSIerで通用するか——8年目の答え
- 5年で独立を決めた理由——SIerにいては得られなかったもの
SIerの仕事内容の実態——プログラミングより「資料作成・コミュニケーション」が多い
SIerへの就職を検討している方が抱くイメージの多くは「一日中プログラミングをする仕事」ではないでしょうか。私も入社前はそう思っていました。実態はかなり違います。
プログラミングだけで一日が終わることは、5年間でほとんどありませんでした。実際の業務の中心は、要件定義の資料作成・顧客へのシステム操作説明・テストの実施・議事録の作成・進捗管理といった地道な作業です。開発フェーズであってもプログラミングの時間は全体の一部で、むしろ設計書を書いたり、顧客との認識を合わせるための資料を作ったりする時間の方が長かったです。
評価される能力も、技術力よりコミュニケーション能力・資料作成能力・空気を読む力の方が重視される傾向がありました。顧客が何を求めているかを察して言語化する、チームメンバーが何に詰まっているかを読んで動く——こういった能力が現場での評価に直結していました。
「SIerはプログラミングの仕事」というイメージは入社前に手放した方がいいです。実態は「ITを使って顧客の課題を解決するための調整・設計・説明の仕事」です。この認識を持って入社できるかどうかが、入社後のミスマッチを防ぐ最大のポイントだと感じています。
SIerで「きつかった」こと3つ——5年間の正直な体験談
きれいごとなしに、5年間で本当にきつかったことを3つお伝えします。
① 誰も教えてくれない環境で顧客説明をこなし続けた
入社して間もない頃、触ったことのないパッケージ製品の設計者として案件に参画しました。顧客への標準動作の説明を毎週行う必要があったのですが、社内に教えてくれる人がいませんでした。自分でデモ環境を立ち上げてあらゆる操作パターンを試し、動作をメモして、翌週の説明に備えるという作業を毎週繰り返していました。残業して仕様を確認し、それでも説明できなかったことを翌週に持ち越す、というサイクルが続いたこの時期は今振り返ってもきつかったです。
② 実作業のほぼすべてを一人でこなす構造
役職持ちの先輩とペアで動くことが多かったのですが、レビューは厳しく指摘してもらえる一方で、実作業は「自分でやりなさい」という空気でした。先輩も別の案件を複数抱えていたため忙しく、質問しても後回しになることもありました。責任感を持って仕事を任される経験は成長につながりましたが、孤独を感じながら作業していた期間も長かったです。
③ 若手だからこそ急な雑務が集まってきた
「若いから動ける」という理由で急な雑務が集まりやすい環境でした。22時まで帰れない日が度々あったのも、本来の業務だけでなく突発的なタスクが重なったことが大きな要因です。理不尽に感じたこともありましたが、断れない雰囲気の中でこなし続けることで、段取り能力や優先順位の付け方は否応なしに鍛えられました。
技術的な難しさより「教えてもらえない環境で顧客対応を続けるプレッシャー」「実作業を一人でこなす孤独感」「若手ゆえの雑務集中」が積み重なるきつさです。ただし、これらを乗り越えた先に残るものは確かにあります。
SIerに入って「良かった」こと——フリーランス3年目の今も活きていること
きつかった面を正直に話した上で、入って良かったと感じていることも同じくらい正直にお伝えします。
私が勤めていたのは中小規模のSIerでした。大手SIerと比べると知名度やブランドは劣りますが、年齢の割に与えられるポジションと裁量が大きかったことは今でも感謝しています。小規模案件ではプログラマー・SEとして要件定義や設計を担い、テスターとして品質を確認し、プロジェクトリーダーとしてメンバーの管理やタスクの割り振りまで一通り経験しました。入社3〜4年目でこれだけの幅を経験できる環境は、大手SIerではなかなか得られなかったと思っています。
信頼できる上司がいたことも大きかったです。自分なりに考えた進め方を上司に伝え、フィードバックをもらいながら修正して進める経験を繰り返す中で、失敗の中から「どう進めればいいか」「どういう観点でレビューすべきか」「顧客との認識合わせをスムーズにするにはどうすべきか」を自分の言葉で語れるようになりました。
この経験がフリーランスになった今、最大の武器になっています。顧客から仕事を依頼された際に、人に聞かなくても自分で考えてタスク化して実行できる。その結果として顧客から「一緒に仕事がしやすい」「あなたに相談すれば何とかなる」という評価をいただく機会が増えました。SIerで幅広いポジションを経験したことが、フリーランスとして自走できる土台を作ってくれました。
- 要件定義・設計・テスト・プロジェクト管理まで一気通貫で経験できる
- 顧客との認識合わせ・説明資料の作成スキルが自然と身につく
- 失敗しながら進められる環境で「考えて動く力」が鍛えられる
- 信頼残高を積み上げる経験が、どの職場でも通用する人間力になる
会社員SEとフリーランスSEで実際に何が変わったかは、こちらの記事で詳しく比較しています。独立を視野に入れている方は合わせて読んでおくと判断材料になります。
文系でもSIerで通用するか——8年目の答え
「IT業界は理系じゃないと厳しいのでは」という不安を持っている文系の方に、8年間エンジニアとして働いてきた立場からはっきり言います。文系か理系かは、3年も働けば関係なくなります。
入社時点での技術的な知識量に差はあります。ただし前述の通り、SIerの現場で求められるのはプログラミングスキル以上に、コミュニケーション能力・資料作成能力・顧客の気持ちを読む力です。これらは学部や専攻とは関係なく、現場経験の中で身につくものです。理系出身者がプログラミングで有利な場面があっても、3年間現場で経験を積めばその差は埋まります。
「IT業界に興味がある」「プログラミングってなんかかっこよさそう」という動機で入社しても構いません。最初は挫折することがあっても、続けることで成長できる業界です。また、IT人材不足の影響でエンジニアの需要は高く、経験を積めば年収も上がりやすい業界でもあります。文系だからという理由でIT就職をためらっているなら、その心配は不要です。
- 人の話を聞いて整理するのが得意(文系に多い)
- 資料をわかりやすくまとめることに苦を感じない
- 知らないことを自分で調べて解決しようとする姿勢がある
- チームで動くことが苦でない
- 挫折しても続ける根気がある
5年で独立を決めた理由——SIerにいては得られなかったもの
5年間のSIer勤務を経て独立を決めた理由は大きく2つです。
① 成果が収入に直結しない構造への限界
会社員時代、顧客からも社内からも高い評価をいただいていました。それでも年収の上がり幅は限定的でした。年功序列の給与体系の中では、自分よりも経験年数が長い同僚の方が給与が高く、自分の成果がそのまま収入に反映されない構造が続いていました。「もっと稼ぎたい」という欲求が年々強くなり、成果と報酬が直結するフリーランスという選択肢が魅力的に見えてきました。
② 案件の選択肢と発言の自由を手に入れたかった
会社員時代は案件を自分で選ぶことができず、与えられたものを引き受けるスタイルでした。結果として何年も同じ保守作業を続けることになり「このままでは成長が止まる」という焦りが生まれました。また、顧客とのやり取りでも「会社に迷惑がかからないように」という配慮から、本音で意見を言えない場面がありました。フリーランスになれば、自分の発言は自分の責任。本音で顧客に向き合えると思ったことが、独立の大きな後押しになりました。
5年という期間は、振り返ると長すぎず短すぎないちょうどいいタイミングでした。プログラマー・SE・テスター・PLといったポジションを一通り経験し、顧客対応・プロジェクト管理・メンバーマネジメントの基礎が身についた状態で独立できたことが、その後の安定につながったと感じています。
独立後の現実については、こちらの記事で詳しく話しています。SIerを経てフリーランスになることを検討している方はぜひ読んでみてください。
- SIerの仕事はプログラミング中心ではなく、資料作成・顧客対応・テストといった地道な作業が大半を占める
- きつさの本質は「誰も教えてくれない環境でのプレッシャー」「実作業を一人でこなす孤独感」「若手への雑務集中」の積み重ね
- 中小規模SIerは裁量が大きく、年齢の割に多様なポジションを経験できる成長環境でもある
- 文系か理系かは3年で関係なくなる。求められるのは技術力より対人スキルと資料作成力
- 5年で独立を決めた理由は「成果が収入に直結しない構造への限界」と「案件選択・発言の自由を手に入れたかったから」
SIerはきつい面も確かにありますが、幅広い経験を積める環境でもあります。文系・理系問わず、IT業界に興味があるなら挑戦する価値は十分あります。まず飛び込んでみることが、キャリアの選択肢を広げる第一歩です。
独立を検討し始めたら、準備しておくべきことをこちらの記事でまとめています。
※本記事は個人の体験談をもとにしています。SIerの環境・待遇は企業規模・案件・時期によって大きく異なります。


