「AIでエンジニアの仕事がなくなる」というニュースやSNSの投稿を見て、不安になったことがある方は多いと思います。特にフリーランスとして案件単位で仕事をしていると、会社員以上に「必要とされなくなったら契約が切られる」という危機感がリアルに感じられます。私自身、フリーランスとして案件を得ながら生活している立場なので、他人事ではありません。この記事では、開発現場で日々AIと向き合っている立場から、実際に何がどう変わってきているのかを正直にお話しします。
SEねぐです。フリーランスSE3年目。結論から言うと、AIによって仕事の中身は確実に変わっていますが、「エンジニアという仕事そのもの」が消えていくというより、求められる役割が変化していると感じています。不安を煽るつもりも、逆に安心させるつもりもなく、現場で見えている実態をそのままお伝えします。

- 「AIでエンジニアの仕事が消える」という言説の実態
- 現場で実際にAIに置き換わりつつある業務
- 現場でまだAIに置き換わっていない業務とその理由
- フリーランスという立場は特に影響を受けやすいのか
- 今後のキャリアで意識している備え
「AIでエンジニアの仕事が消える」という言説の実態
まず客観的な情報として、AIとエンジニアの仕事についてどのような調査・見解が出ているかを整理します。結論を先に言うと、「仕事が完全になくなる」という見方と「仕事の中身が変わるだけ」という見方の両方が存在し、専門家の間でも意見が分かれています。
ある調査では、職業別のAI代替可能性としてエンジニアは60〜80%程度という数値が示される一方、別の調査では、AIコーディングツールの普及後もエンジニア採用の落ち込みは他の職能より浅く、採用全体に占める比率はむしろ上がっているというデータも報告されています。また、AIコーディング支援によって定型的なコード生成のスピードが体感で3〜5倍程度向上した一方で、「仕事そのもの」が消えたのではなく、設計・判断・コミュニケーションへの比重が増したという指摘も複数の現場関係者から出ています。
一方で、AIを理由とした人員削減が実際に増えているというデータもあり、不安が根拠のないものというわけでもありません。特に、経験の浅いジュニア層の採用枠が絞られる傾向は複数の調査で共通して指摘されており、「今いるエンジニアがすぐに職を失う」というより「これからエンジニアになる人の入り口が狭くなる」という変化の方が、現時点ではより顕著だと言えそうです。
※本項の調査データは各種メディア・レポートで報告されている一般的な見解の紹介であり、将来の雇用動向を保証するものではありません。
数字だけを見ると不安が増す部分もありますが、こうした調査結果は業界全体の傾向を示すものであり、個々のエンジニアがどうなるかまでは教えてくれません。ここからは、実際に現場で手を動かしている立場として、日々の業務でどんな変化を感じているかをお伝えします。
現場で実際にAIに置き換わりつつある業務
一般的な調査データを踏まえた上で、実際に現場で「これはもうAIがやってくれるな」と感じている業務を挙げます。
- 議事録の作成:会話内容を要約・構造化するのはAIが得意とする作業
- 簡単なコードの実装:仕様が明確な定型処理はパターン学習で再現しやすい
- テストコードの作成:既存コードから機械的にパターンを導き出しやすい
- コードレビュー(構文・スタイルレベルのチェック):ルールに沿っているかの判定は自動化しやすい
これらはいずれも、ルールやパターンがある程度明確で、過去の事例をもとに学習しやすい定型的な作業という共通点があります。数年前まではエンジニアが時間をかけて行っていた作業ですが、今はAIに指示を出せば数分で初稿が出てくる状態になっています。
現場でまだAIに置き換わっていない業務
一方で、今の現場でもまだ人がやらなければ難しいと感じている業務もあります。
- 要件のヒアリングから整理:曖昧な要望の裏にある本音を読み取る必要がある
- 設計の提案:ビジネス上の優先順位を踏まえたトレードオフの判断が必要
- コードの統一・共通化の判断:プロジェクト全体を俯瞰した一貫性の判断が必要
- テストの実施(設計・全体管理):何をどこまで検証すべきかの判断に経験が必要
これらに共通しているのは、クライアントの曖昧な要望を汲み取ったり、複数の選択肢の中からビジネス上の優先順位を踏まえて判断したりする、という性質の作業だという点です。AIは与えられた指示に対して答えを出すことは得意ですが、「本当は何を求めているのか」を読み取ったり、意思決定の責任を持ったりすることはまだ苦手だと感じています。技術的な正しさだけでなく、顧客との信頼関係や、システム全体を俯瞰した判断が求められる部分は、今のところ人が担う領域として残っています。
フリーランスという立場は特に影響を受けやすいのか
フリーランスという立場だからこそ感じる不安と、逆に安心材料の両方があります。
会社員であれば、たとえ担当業務がAIに置き換わったとしても、社内の別部署への異動や別プロジェクトへのアサインといった形で雇用が維持される可能性があります。一方、フリーランスは案件ごとの契約が基本のため、クライアントが「この業務はもうAIで十分」と判断すれば、契約更新そのものが行われないという形で結果が直接的に表れます。会社員よりも影響がダイレクトに出やすい働き方だという点は、フリーランスとして意識しておくべき前提だと思います。
不安に感じているのは、クライアント側のITリテラシーが年々高くなっていることです。以前であれば外部に発注していたような簡単な業務改善程度なら、クライアント自身がAIを使って作ってしまえる場面が増えてきました。実際、以前は「ちょっとしたExcel集計の自動化」のような小さな相談も案件として依頼されることがありましたが、最近ではそうした相談自体を耳にする機会が減ってきています。クライアント自身がAIツールを使って自己解決してしまうケースが増えているのだと感じます。その結果、フリーランスに依頼される案件は、より高度で専門性の高いものに絞られていく傾向を感じています。案件の裾野が狭まっていくのではないかという点は、正直不安の一つです。
一方で安心材料もあります。先ほど触れた通り、要件のヒアリングや設計といった上流工程は、まだAIに置き換わりにくい領域です。私自身、独立当初から上流工程を得意分野として案件に取り組んできたこともあり、この点では安心している部分があります。また、今まで自分一人では実装しきれなかった内容も、AIを使うことで技術の幅が広がり、対応できる範囲が増えました。結果として、以前より評価される機会が増えたという実感もあります。
スキルアップに関する悩みについては、こちらの記事でも詳しく扱っています。
今後のキャリアで意識している備え
AI時代に向けて、自分なりに意識するようになった立ち回りが2つあります。
1つ目は、AIが出力した内容をそのまま使わないことです。AIが提示したコードや文章をいったん自分の頭で理解し、より良い形に改善できないかを必ず考えるようにしています。最終的にクライアントへ説明する際には、AIの言葉をそのまま伝えるのではなく、自分の言葉で話せるレベルまで理解しておくことを大事にしています。
2つ目は、複数のAIを併用してハルシネーション(AIが誤った情報をもっともらしく出力してしまう現象)が起きていないかをチェックすることです。1つのAIの回答を鵜呑みにせず、別のAIにも同じ質問を投げて答え合わせをすることで、誤った情報をそのまま実装してしまうリスクを減らしています。
周囲のエンジニアを見ていても、AIを使うこと自体はすでに当たり前になっています。ただし、使い方には明確な差が出ていると感じます。AIの提案をそのまま受け入れてしまう人は、統一性のない、いわゆるスパゲッティコードになりがちです。後から見返すと、同じような処理があちこちに重複していたり、命名規則がバラバラだったりして、保守性が下がってしまっているケースを何度も目にしてきました。逆に上手に使いこなしている人は、AIを前提にした自動化の仕組みづくりまで考えており、単なる作業効率化を超えた活用をしています。同じAIツールを使っていても、最終的な成果物の質にはっきりと差が出るのを間近で見てきたからこそ、「AIを使う」ことよりも「AIをどう使うか」の方が、これからのエンジニアにとって重要になると感じています。この差は、今後のキャリアにも大きく影響してくると考えています。
本業以外の収入源も含めたキャリアの考え方については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
今回あらためて自分の働き方を振り返ってみて感じたのは、AIによる変化のスピードは想像以上に速いということです。1年前には当たり前だった作業が、今ではAIに任せて当然という感覚に変わっています。この変化のスピードに置いていかれないためには、「AIに仕事を奪われるかどうか」を心配し続けるより、「AIと一緒にどう仕事を進めるか」を日々アップデートし続ける姿勢の方が、結果的に自分を守ることにつながると感じています。

